
リスク
Risk
「経営に資するリスク管理」を先導するEYのリスクサービス
企業活動を取り巻くリスク要因は多岐にわたり、ますます複雑化しているようです。
どのようにニーズを捉えていますか。
吉田:
ポピュリズム・ナショナリズムの世界的台頭といった地政学要因をはじめ、新興国の成長を含む経済要因、少子高齢化などの社会要因、さらにデジタルテクノロジーの進展にまつわる要因や、気候変動・生物多様性などの地球環境問題というように、組織経営に影響を与える外的要因は枚挙にいとまがありません。それらを総じていえば「先の見通せない不確実性」であり、これにどう対応するかがリスクマネジメントの要諦であるとわれわれは考えています。その必要性・重要性を日々肌身に感じておられる経営陣や社外取締役の方々から、経営判断の支えとなるようなリスク管理機能を求める声が高まっています。
小山:
あらゆる事業活動において、100%確実というものはなく、必ず何らかのリスク対応を要します。法令順守やガイドラインへの適合といった決まりごとへの対応もあれば、個々の業務に付随するエラーを防止・軽減させるオペレーショナルな対策もあります。従来行われてきたこれらのリスク対応を「静的」なものとすれば、われわれが重視しているのはそれだけにとどまらない「動的」な取り組み、すなわち世の中の不確実性に即して絶えずアクティブな判断を求められる経営者の目線に沿った経営管理とガバナンス。われわれはこれを「経営に資するリスク管理」と呼んでいます。
静的なリスク対応は多くの場合、現場に近いところでリスク要因を見いだし経営課題へと引き上げるボトムアップ型であり、動的なリスク管理は経営戦略や事業計画、あるいは資本市場からの期待値を起点として企業価値向上の視点で計画・方針の前提を覆すリスク要因を洗い出し、先んじて打ち手を講じるトップダウン型である。そんな捉え方もできるでしょう。
吉田:
その両面をカバーしているのがEYリスクコンサルティングの特長ですが、わけても経営戦略に直結するリスク管理への要望が増えているのが最近の傾向です。例えば、ウクライナ情勢や中近東情勢が混迷の度合いを深める中、商流に影響を受ける自社の事業を今後どうするのか。見通しが立ちにくい状況下で、撤退か休止かの判断一つにも社運がかかる事態が現に起きています。そうした予測が難しい不確実性が高い事象も考慮した経営戦略の構築や代替策が求められているわけです。
実際、グローバルに多くの拠点を有するメーカーにわれわれの支援が入ることで、複数の主要リスクに対する対応を「最重要の経営アジェンダの一つ」へと転換し、全社的リスク管理(ERM)の体制が機能し始めた例もあります。

いくつものリスクドライバーから複数のシナリオを構想する
経営に資するリスク管理とは、具体的にどのようなサービスでしょうか。
小山:
さまざまな外部環境の変化が企業経営にとってリスク要因になるわけですが、すでに起きている事象を捉えて講釈を加えても何の意味もありません。事業戦略にかかる意思決定のロジックを整理するとき、今の状況を踏まえてそれらが今後どう変わり、どんな影響を及ぼすと考えられるのか。複数のシナリオを構想することが第一段階。そのうえで、それぞれに即した打ち手を提案し、実行へと伴走する。ここまですることにわれわれのバリューがあります。
ここ1年の活動を振り返ると、2024年が始まるときにわれわれは、(1)世界的なナショナリズム・ポピュリズムの動き、(2)生成AIを始めとするデジタル技術の進展、(3)労働力の変化・多様化、この3つの要因が絡み合う状況を代表的なリスクドライバーとしてシナリオに落とし込む作業を行い、複数の企業とディスカッションを進めました。自社の事業活動にかかるリスク対応検討を進めてきたクライアントは今、成果を感じ始めているところではないかと思います。
吉田:
要はリスクが顕在化する前からシナリオを描き、事業戦略と事業計画の見直しを行うとともに、クライアントと議論を深めながら対応策の最適解を求めていく。そのプロセス自体がわれわれのサービスといっていいでしょう。
小山:
われわれは占い師ではないので、策定したシナリオが当たるかどうかで勝負しているのではありません。情報収集に始まり、ストーリーを紡ぎ出し、アイデアをぶつけ合いながら、いくつもの対応策を生み出していく。その仕組みづくりをサポートすると同時に、一連の流れに伴走することがコンサルタントの役目であって、あたかも知識自体に価値があるかのように見せて売る昔のやり方とは一線を画しています。
先ほどの静的なリスク管理を含め、ユニット全体のチーム体制についてお聞かせください。
吉田:
大きく4つの領域に分かれてサービスを提供しています。1つ目が、今もお話しした経営戦略に密に関わるリスクマネジメントを含むERMの構築・高度化支援。2つ目に、DXの推進に伴い重要性が増しているデジタルリスクとセキュリティ対応といったガバナンスの構築・改善支援。3つ目が、官民連携を含む社会課題への対応にフォーカスした公共サービス。最後は、内部監査およびJ-Sox対応などの法令順守を軸とした業務支援とプロセス改善に関わるサービスとなります。
これらはすべてマーケットインの発想で提供するサービスです。お仕着せのリスク管理パッケージを売るのではなく、企業や組織が今まさに必要としているリスク管理とは何かを絶えず考え、柔軟に対応しているところに特長があります。その意味では、これらすべてが経営に資するリスク管理に含まれるといっていいでしょう。

「チームの協業によるバリューの掛け算」を体現する組織
他の大手ファームとの差別化要因としてはどんなことが挙げられますか。
小山:
まず、パーパス経営がしっかり根を下ろしていることは強みの源泉といえるでしょう。EYでは「Building a better working world〜より良い社会の構築を目指して」をグローバルの統一されたパーパス(存在意義)としていることで、目先の利益やリスクだけにとらわれない、長期的な目で見た社会全体の豊かさを求めようとする姿勢がすべての活動の根っこにあります。
これを土台としてリスクコンサルティングのラインとしても、不確実性の高い環境に置かれたクライアントの成長を第一義に考え、ビジネスに成功をもたらすためにどう動くかをリスク管理の中心に埋め込んでいます。それが実現してこその、より良い社会であるからです。
吉田:
EYの大きな特長の一つとして、リスクコンサルティングのラインとビジネスコンサルティングのラインが同じ法人内に共存していることも挙げられます。加えて戦略コンサルティングの部門や、M&Aや事業再生のサービス部門もあり、それらが縦横無尽に結びつき、知恵とノウハウを出し合う連携プレーが常態化しています。だからこそ、われわれリスクコンサルティングの組織が「顧客ビジネスの成功」を目標に動くことが自然と可能になるわけですね。
小山:
いわば、チームの協業によるバリューの掛け算といったところでしょう。そうした土壌がありますので、われわれのメンバーもリスクマネジメントやガバナンスの世界に凝り固まった専門家では決してなく、経営戦略の目線とリスク管理の目線を掛け合わせてどんな価値を生み出せるだろうかと考えをめぐらせ、意見を出し合い、議論を楽しむような風潮があります。
多様なバックグラウンドを持つメンバーが、いろいろな角度からリスクにアプローチするわけですね。
小山:
そうですね。必ずしもリスク管理の経験者に限らず、事業会社の経営企画担当者や、システムエンジニア、官庁職員などと出身はさまざまです。違う視点からアイデアを持ち寄るうえでメンバーの多様性は不可欠ですし、また頭数だけそろえてプロダクトを量産するような工場化されたチームにはしたくありませんので。一人ひとりがプロでありたいと考えています。
吉田:
特にシナリオ策定などは一朝一夕でできるような仕事ではありませんが、挑戦する意欲とストレッチを怠らない気構えさえあれば、成長できる仕掛けは十分に整っています。リスク管理の場合は特に現場感覚が大切なのでOJTは重視しています。それもただ場数を踏むというよりも、上位職が背中を見せて実践する場をともにすることで学びとってもらう。そんな姿勢で臨んでいます。

業界・市場の動向、EYとして提供できる価値を教えてください。
デリスキリングの進行、少子高齢化社会の到来、先進テクノロジーの加速的発展など、ビジネス環境を取り巻く大きな変化に柔軟に対応するために、体制・プロセス・カルチャーを変革していくことは、組織にとっての重要な課題です。そして変革の重要なキーとなるのが「デジタル」です。AIやデータを抜きにして変革を実現することはできないでしょう。
Digital Riskユニットは、クライアントがデジタルを活用し事業戦略や組織変革を実現するために必要なマネジメントの仕組み(=「デジタルガバナンス」)を構築することを支援しています。また、仕組みを構築するのみならず、それに沿った施策の実行を伴走支援することにより、事業目標の達成に直接貢献いたします。
チームの強み、提供サービスを教えてください。
先述の通り、われわれの仕事を大別すると「マネジメントの仕組みづくり」と「施策実行の伴走支援」の2種類に分けることができます。前者の例として、経営層がデジタル化に係るカネを把握・管理するための体制(デジタル投資やポートフォリオ)を構築することが挙げられ、後者の例ではデジタル化のプロジェクトを推進するためのPMO支援が挙げられます。つまり経営層・執行層の双方の目線で業務に関わることにより、形骸化しない仕組みを構築することができます。
どのようなチームメンバーを求めていますか。
われわれが相対するクライアントは大きな変化に晒(さら)されています。一昔前のように、誰かが答えを持っていて、それを忠実に実行するようなコンサルティング業務はもはやありません。クライアントの経営層や執行層との対話を通じ、これまでの常識を疑い、変化を受け止め、そしてトライ&エラーを楽しむことができる、そんな方と一緒にお仕事をしたいです。
EYではどのような経験・成長を得られるのでしょうか。
EYSCでは全社共通でコンサルティングのスキルを磨くための研修プログラムが用意されています。また、グローバルのナレッジデータベースが充実しており、プロジェクト事例の入手やコンタクトパーソンの特定が非常にスムーズです。
Digital Riskユニットでも、「専門知識勉強会」や「提案のためのロールプレイ」などの研修プログラムを整備しているほか、OJTにおいても一人一人のスキルレベルに沿った指導・育成を意識しています。

パブリックアジェンダ
森 勇雄
業界・市場の動向、EYとして提供できる価値を教えてください。
日本を含む世界各国における社会を取り巻くリスクは、より多様化し、かつ複雑化の一途をたどっています。
我々、Public Agendaでは、Economics、Geopolitics、Technology、Environment、Societyの5つの領域における専門性を有したメンバーが中心となって、これらの社会的なリスクのマネジメントや社会課題の解決に取り組んでいます。
チームメンバーは、誰もが安心・安全に暮らせる社会の構築に貢献できることを信じて、日々研さんに努めています。そんなチームの一員となっていただける仲間を我々は広く求めています。
チームの強み、提供サービスを教えてください。
われわれPublic Agendaは、以下の3つのチームで構成されています。
日本企業の海外進出・展開に係るリスクマネジメントの支援や、地域経済やスタートアップが取り組むイノベーションに係るリスクマネジメントを支援している“Global Risk & Innovation”
国民の生活を支える各種の社会インフラに係るリスクマネジメントや先進的なサービスの社会実装に向けたリスクマネジメントを支援する“Social Infrastructure Risk”
不正・不適切な行為の防止に向けた技術活用支援や、先進的な技術の活用に係るリスクマネジメントを支援する“Social Technology Risk”
Public Agendaでは、これらのチームがサイロ化することなく、相互に連携しながら、多様なリスクに取り組んでいます。
また、EY Japanの各エキスパートや、社外のエキスパートとも連係することで、クライアントが直面する課題・リスクに応じて最適なチームを組成しています。
どのようなチームメンバーを求めていますか。
われわれが取り組むリスクの領域は非常に幅広く、それぞれの領域についての知識・経験をお持ちの方はもちろんですが、知識や経験がない方であっても多様かつ複雑なリスク・課題に対して強い興味と、熱意を持って取り組んでいただける方を求めています。
また社内外との連携機会も多いため、コミュニケーションを大事にしていただける方を重視しています。
EYではどのような経験・成長を得られるのでしょうか。
当チームはコンサルティング未経験の方も多く、中央府省庁や自治体、他の事業会社から転職してこられた方が、デリバリー経験を通じて成長し活躍されています。また当チームは、女性比率も高く、それぞれのライフスタイルに応じた働き方の調整にも取り組んでいます。若手の方には、多様な領域に取り組んでいただく中で、ご自身の強みや専門としていく領域を見つけて、成長していただくことを期待します。
プロジェクト事例

大手消費財メーカーにおけるリスク・ガバナンスの高度化支援

大手サービス業における20XX年の市場で勝つためのITガバナンス戦略立案支援

建設業における経営課題を解決するためのシステム化構想策定およびシステム導入支援

日本企業の地政学・地経学リスク対応支援

大手製造業における「3線モデル」の導入支援
チーム紹介
