サプライチェーン
Supply Chain & Operations
世界的視野で分断を回避、再生する
サプライチェーン変革エキスパート
地政学的リスクが世界の産業界を震撼(しんかん)させ、経済安全保障の重要性が叫ばれる中、分断されるサプライチェーンを早く的確に組み換える必要性が高まっています。求められているのはテクノロジーによる業務プロセスの刷新だけでなく、業務そのものの本質を見据えたトランスフォーメーションです。コンサルタントはどう動くのか。SC&O(サプライチェーン・アンド・オペレーションズ)ユニットのリーダーが語ります。
サプライチェーンを俯瞰(ふかん)し、ミクロとマクロの両面で変革を起こす
企業のサプライチェーンを取り巻く現況についてお聞かせください。
地政学的な危機感の高まり、その中で顕在化する経済安全保障と新たなルール形成の必要性、パンデミックのような思いも寄らない有事の出現、そして気候変動対策とサステナビリティの確保。こうした世界情勢は言うまでもなく、企業活動そのものともいえるサプライチェーンのあり方に大きな影響を及ぼしています。資材調達難による供給不足、人手不足による物流危機もあるでしょう。そうした中でかつてのような連続性が損なわれ、分断してしまったサプライチェーンをいかにして組み換えるか、多くの企業が今、その問題に躍起になっています。
ご存じのようにサプライチェーンは、原料調達に始まり、製造、在庫管理、物流、販売などと連鎖する非常に幅広い領域をまたいで成り立っています。その過程で生じる課題は局所的なものであるとは限らず、多くの要因が複雑に絡み合っている可能性が大きい。であれば、連鎖の全体像を俯瞰して見渡し、横断的な視点をもって組み換えていく、ひいては組織全体の成り立ちや経営戦略にまで立ち返って見直す必要性があるといえます。
同時にグローバルの視点も欠かせません。ESGの観点からも国際関係の上でも原料調達先の検討は急を要しますが、大手メーカーでさえ有効な代替案を持ち合わせていない例が見られます。これまでも危機対策を講じてきたはずの多くの企業の想定を超える状況が現出している今、拠点となるべき場所のグローバルな組み換えも含めて、一刻も早いサプライチェーンの変革が求められているのが実情です。
コンサルタントとしてどのように対処していかれますか。
お客さまの課題が重層化している以上、その解決に当たるわれわれも局所的な対応に終始するわけにはいきません。サプライチェーン変革の戦略立案に始まり、具体的プランの策定、調達方法の検証、製造工程の見直し、ロジスティクスの最適化に至るまで、一気通貫したサポートを提供する必要があります。さらにいえば、製品やサービスの設計、販売後のアフターサービスの領域にまで踏み込んだ、より大きな目線で捉えた「連鎖」のあり方に対するコンサルティングが求められていると思います。
「ワンユニットオペレーション」の専門力と総合力
急を要する変革において、SC&O(サプライチェーン&オペレーションズ)チームの強みはどこにありますか。
サプライチェーンを構成する各領域に応じたサブチームを置き、その分野に精通したスペシャリストを配置することで、お客さまの課題にダイレクトに斬り込むことができる体制を築いています。
われわれが他の大手ファームと異なるのは、そうした専門性をベースとしながらも、それぞれのスペシャリストが横断的に関与しあい、チーム全体として課題解決に当たるスキームを確立していることです。つまり、サブチームによって領域が分断されることはなく、常に「ワンユニットオペレーション」によるビジネスを展開する。この連携と相互補完の体制が、分断されたサプライチェーンを組み換える上で大きな強みになると考えています。
また、このスキームは日本のEYだけの仕組みではなく、世界150以上の国・地域にわたるEYのメンバーファームの共通体制でもあります。世界中どのエリアにおいても同じメソドロジーで同じ品質のサービスを提供する。このことも、EYの得意技であるグローバル連携の実効性を高め、サプライチェーン再構築の世界戦略に資するものだと思っています。
EYが強みとするコラボレーションのよりどころとは何でしょう?
「Building a Better Working World〜より良い社会の構築を目指して」というEYが掲げる世界共通のパーパス(存在意義)が、すべて活動の起点となっていることでしょう。パーパスが求めているのは顧客単位の課題解決にとどまらない、業界全体の、ひいては社会全体の課題解決です。思えばサプライチェーンの課題こそ社会課題の最たるものであり、われわれが全力で当たるのにふさわしい領域だと考えられます。
こうしたブレない軸があるために、SC&Oの中だけでなく、ユニットを超えた連携も途切れることなくつながるのだと思います。例えば、ESGや経済安全保障など社会的構造に関わる課題に斬り込むユニットや、税務上のメリットや収益性を高める変革に取り組むユニット、M&Aや事業再編といった戦略的トランザクションをけん引するユニット、さらにいえば中央省庁などの公共セクターや社会インフラ系の企業を支援するユニットなど。いずれもサプライチェーンが抱える課題との関わりは深く、われわれとのコラボレーションも加速する傾向にあります。
「T字型人材」が追求するビジネスコンサルティングの真の姿
この領域における仕事の醍醐味(だいごみ)はどのようなところに感じますか。
お客さまとの一体感といいますか、そのお客さまの業務領域に一歩も二歩も踏み込んで、ともに変革を呼び起こしていく過程は面白いですね。基幹システムの刷新による業務プロセス改革というアプローチも多く見られるのですが、EYではシステムというより業務そのものに深く関わりを求めていく、ビジネスコンサルティング本来の姿に徹しているのが心地よいところです。
例えば、サプライチェーンの計画立案は人の判断に委ねられることが多く、ともすれば属人的になりがちな領域です。これをいかにして可視化し、普遍的な仕組みとして機能させるか。それをサポートするにはわれわれ自身もお客さまと同じくらい業務に精通する必要がありますし、現場の事情も知らなくてはなりません。がっちりタッグを組んで伴走するからこそ、うまくいったときの喜びも大きいわけです。
もう1 つは、サプライチェーン変革を通じて企業活動の最もコアな部分にタッチできる面白さもあります。冒頭でも触れましたが、企業がどんな製品やサービスをどうつくり、どのようにして顧客に届けて利益を上げていくかの一連の活動を表すサプライチェーンは、企業活動そのものだといえるからです。コンサルタントとして企業経営の何たるかを理解するのに非常に適した領域だと思います。
メンバーの成長をサポートする仕組みはありますか。
EYとしての各種の教育研修プログラムとは別に、サブチームごとに専門性を磨くトレーニングの仕組みを置いています。サービス内容に関するオファリング開発を通じた育成も含め、通常のプロジェクト活動とは切り離して実施しているのが特徴です。
ただ、実際のプロジェクトへのアサインメントは、チームで閉じずにSC&Oとしてワンユニットで行います。つまり、自分の専門領域に関する案件だけでなく、別の領域にもメンバーとして積極的に加わるよう仕向けていく。そのことで、先ほど申し上げたように課題解決の全体スキームが実効するわけですが、メンバーの立場からすると、1つの専門性に終わらず幅広いケイパビリティが身につくという強みが生まれます。われわれはこれを「T字型」の人材育成と呼んでいます。