テクノロジー・ストラテジー&トランスフォーメーション
Technology Strategy & Transformation
電力会社におけるガス事業買収実現支援
エネルギー業界を取り巻く外部環境の変化に伴い、エネルギー業界の事業は大きな変革期を迎えています。特に、市場の自由化によって、電力会社は電気だけではなく、ガスやサービスをはじめとした新たな事業・ポートフォリオの確立を急いでいます。また、自由化によって、既存の顧客も電力会社を選ぶ時代になり、提供する電気の低コスト化とともに、新たな付加価値を含むサービス向上が求められています。こうした中、電力会社では、地域密着型のガス会社の買収を計画し、従来の電気に加え、ガス販売を新たな事業ポートフォリオの基軸とするように検討が進められています。しかし、買収に向け、ガス企業の価値評価、特に保有しているシステムについての知見を電力会社では有していないため、買収先が保有するシステムの継続的利用可否や、自社システムへの統合可否、また、ガス事業買収後の電気事業とのシナジー向上等のグランドデザイン策定が急務となりました。
こうした背景から、本プロジェクトでは、「買収先システムのデューデリジェンス評価」、「買収後のシステム継続利用または自社システムとの統合化計画の策定」、「電気とガス事業の相互付加価値を高めるためのシナジー施策の策定」、さらに、「プロジェクト全体を統合管理する詳細計画の策定と推進」が求められました。買収先ガス事業に必要な基幹システムの刷新や統合によって、データに基づく迅速かつ高精度な意思決定と、電気とガス利用顧客の統合管理による「データドリブン経営・顧客サービスの最大化」の実現や、業務の大幅な効率化と電気・ガス事業の高付加価値化を支える新たな経営基盤を構築することを目標としています。
プロジェクトの対象となるガス事業のシステム範囲は多岐にわたり、対象となる業務アプリケーションは基幹業務システムとしての財務系パッケージ、会計データを連携する周辺関連システム、さらには、ガス事業の中核となる顧客とのインターフェースとして、CRMやCISが複雑化した全体システムの中で利用されています。ガス事業全体を俯瞰(ふかん)した業務知見と、適用されているシステムを分析できる能力が求められるとともに、買収後のシステムのあるべき姿の構想策定、また、電気・ガス事業の両視点からの顧客へのサービス向上を計画する等、支援範囲、支援難易度も高いものとなります。
EYの体制とそれぞれの役割
本プロジェクトは、複数のチームで構成されています。買収先ガス事業のシステムをデューデリジェンス評価するチーム、ガス企業が保有するシステムの今後(継続利用・再構築・電力との統合)の在り方を検討するチーム、買収したガス事業と既存の電気事業のシナジーを含む統合後のサービスの在り方・事業を検討するチームの3つが主なタスクで、これ以外にも全体を統合しプロジェクトを推進するチームも存在します。EYは、全体統合マネジメント、システムデューデリジェンス評価、買収後システムのあるべき姿の検討(PMI)、電気・ガス事業統合によるサービス向上の検討等に支援参画し、ほぼ全ての領域でサポートしています。
エネルギー業界出身で同業界に深い知見を有するプロフェッショナル、複数の大規模システムの構築経験を有し、システム構成に詳しいアーキテクト、プロジェクト全体の統合計画を策定し、プロジェクトを推進するPM/PMO有識者等、プロジェクトのチームと役割に応じたプロフェッショナルメンバーが参画し、各領域を支援しています。
また、本案件はテクノロジーコンサルティング部門単独ではなく、ビジネスコンサルティング部門や、セクター部門からもコンサルタントが複数名参画し、EYストラテジー・アンド・コンサルティング全社で最適な体制で進めています。このような混成のプロジェクトチームであっても、部署や役職による隔たりがなく、コミュニケーションを取りやすいカルチャーがEYの強みです。クライアントに対して、最適なサービスを提供するための支援体制を確立するため、各分野のプロフェッショナルが参画することでコラボレーション体制を実現しています。
クライアントに提供したEYならではの価値
エネルギー業界知見を元にした将来像策定
電気・ガス業界における顧客との契約からサービスの提供までは、他事業と違って約款等を含めて複雑であり、また導入しているシステムも電気事業会計規則やガス事業会計規則に準拠する等、エネルギー業界の知見を有したプロフェッショナルがコラボレーションして支援することで、各業務領域を効率的に客観評価することができます。また、エネルギー事業者の将来構想についてもクライアントに的確に提案するためには各領域のプロフェッショナル支援が欠かせません。EYがこうした支援を実現できるコラボレーション以外の理由として、エネルギー業界の変化やマテリアリティに対応する「Field Of Play(FOP):課題に対するアジェンダや対応策案」を有していることが挙げられます。EYがプロジェクトに参画したことにより、将来的な電気・ガス統合後の事業構想策定、各領域(顧客接点、契約、物流、会計等)のシステムのあるべき姿の定義等、計画的に全て完了することができました。このような成果によりクライアントから信頼を得ることができ、現在に至るまで長期的なリレーションの構築につながっています。
エネルギー業界活用システムの洞察
エネルギー業界で活用しているシステムは大規模かつ複雑に絡み合っており、同業界の知見やシステム開発経験を有していないと、当初の計画通りに進まないことが多々あります。本プロジェクトにおいては、プロジェクト組成当初からエネルギー業界出身者やエネルギー業界の大規模システム開発経験者が参画し、各プロフェッショナルが有する知見とコラボレーションした支援部署メンバーの支援等によって、計画的かつ将来像を明確化した推進を実現しています。
複数領域のプロフェッショナル参画による最適コラボレーション推進体制
エネルギー業界の大規模プロジェクトは、関係する業務プロセス・システム・ステークホルダーが多く、難しいプロジェクト運営になります。今回のプロジェクトではガス事業の知見が少ないクライアント側の課題に対して、同事業の知見やシステム開発経験を有するプロフェッショナルが参画したことにより、ガス企業の有するシステムに対する的確なデューデリジェンス評価と、今後のシステムのあるべき姿を的確にクライアントに提案することができました。さらに、ガス企業の買収におけるシステム面の課題だけでなく、財務・税務関係の課題についても、EYの各サービスラインとコラボレーションして、課題解決アドバイザリーを実施したことにより、プロジェクト全体を遅延なく推進することができています。こうした大規模かつクライアントの新事業領域の構想策定に対して、EYは重要なパートナーとして、今後もクライアントと伴走していきます。