ターンアラウンド・アンド・
リストラクチャリング・ストラテジー
Turnaround Restructuring Strategy
窮地の企業を救い、価値創造へと導く
再建・再生スペシャリスト
業績不振・事業失速の窮地に陥ったとき、迅速かつ的確に原因を探り、打ち手を考え、有効な手立てを講じて経営者の意思決定をサポートする ─ 企業の組織再建・事業再生への強力なアドバイザーとして活動している専門家集団が、TRSチームです。「戦略+再生」を旗印にグローバルな協働体制で実績を築く企業救世主のリーダーたちが、仕事のダイナミズムと求める人材を語ります。
企業を悩ます喫緊の課題「業績改善」への最短ルートを拓く
─TRSチームでは企業の再生・リストラクチャリングを担当しているとのこと。この分野の重要性が増している背景についてお聞かせください。
篠原:
地政学的リスクの高まりやコロナ禍からの回復にまつわる不確実性、サプライチェーンの再構成、デジタル環境の進展、顧客チャンネルの変化、人口減少社会の到来など、さまざまな要因が複雑に絡みあう中で企業経営を取り巻く環境は厳しさを増しています。「物言う株主」の存在感が増し、ステークホルダー重視の経営へとシフトチェンジが求められている事情もあるでしょう。
そうした状況下で、企業の勝ち負けの差は以前にも増して鮮明化し、業績改善への道はより険しくなっています。順調そうに見える大企業であっても個々のビジネスを精査していくと、業績の悪い事業、伸びない地域といったものが必ずあるものです。そこをどう改善し、レジリエンス(回復力)とアジリティ(機動力)を高めて企業価値を上げていくか。それが多くの企業にとって喫緊の課題であり、また我々TRSチームに課せられた使命でもあります。
─組織再建、業績回復にもさまざまな局面があると思われますが、具体的にはどのようなサービスを提供しているのですか。
松:
会社全体を見直すという意味で、戦略策定を含めて総合的な支援を求められるケースが増えています。業績不振あるいは成長鈍化を招いた原因はどこにあるのか、その洗い出しと課題の整理から始まり、打ち手を検討し、再生への計画を練り上げ、実行へと進めます。分析と評価の精度を高め、将来性・事業性を踏まえた絵を描き、金融機関から支援を取りつけたり、ステークホルダーの了承を得たりできるようにしなくてはなりません。そこには、事業ポートフォリオの大胆な転換や、市場からの撤退戦略なども含まれます。つまり、幅広く経営課題を見つめ、深く斬り込む支援が求められているわけです。
こうした総合的な再生支援に加え、バリュークリエーションと呼ばれるサービスもあります。コスト削減や運転資本圧縮といった財務面をはじめ、ポートフォリオの最適化にマーケティングの強化、売上増大への戦略、人員計画、組織の見直しなど、広範囲にわたるメニューから企業価値創造への道筋を考え、投資を呼び込む下地を改善します。
クリス:
そして、もう一つの重要な業務がクロスボーダー支援、すなわちグローバル案件です。日本企業が海外で展開している事業や現地法人に問題が生じているケースと、日本に進出している海外企業の子会社などが問題を抱えているケースの両面で、組織再編や事業再生、売却、撤退などのサポートを行っています。
特にここ数年、PEファンドによる投資額の増大や物言う投資家の顕在化に伴い、日本企業のグローバル事業に対してより短いスパンで業績改善を求める風潮が強まっています。以前のように長い時間をかけ、その土地でじっくりと成長させて業績を上げていく、そんなやり方が通用しなくなりました。そうした状況に戦略的に対処できるよう、日本の商慣習や法規制、ビジネスモデル、企業のマインドセットを熟知すると同時に、海外各地のそれらにも精通したEYメンバーファームの面々がタッグを組み、極めて強力なグローバル連携によって最適解を導き出す。そうした仕事をしています。
「連携力」と「多様性」を武器に戦略から再生実現、企業価値創造までを支援
─企業経営の根幹に関わる高度なサポートが求められますね。EYだからこその強みは何でしょう?
松:
先ほどの総合的な支援とも関係しますが、再建業務を進めるには、成長戦略、M&A、不正調査、企業価値評価、サプライチェーン、税務関係、リスク管理、人事政策など、経営全般に関わる幅広い知見と専門知識が欠かせません。当然、TRSだけで完結すべきものではなく、チームやユニットの垣根を越えた「連携力」がものを言う領域です。EYは伝統的にこれを得意とし、企業カルチャーとしても社内制度としても連携を支える土壌が根づいているファームです。
篠原:
それは他の大手ファームからEYに移ってきた人間からもよく聞くことですね。TRSについて言えば、戦略とトランザクションを統括する「EYパルテノン」という部門に属し、経営戦略・成長戦略を策定するストラテジーチーム、企業統合・事業再編などの実行支援を担うTSEチームとともに、「戦略」という枠組みを強く意識したサービスを提供しています。したがって、このEYパルテノン内における結びつきも固く、企業の長期的な成長や価値創造を追求する戦略づくりの一環として、不振部門の改善を位置づけ、総合的な見地から企業経営を支えることができるわけです。
また、TRSは東京の他に大阪にも拠点がありますから、国内では二大商圏をカバーする広がりを持ちつつ、グローバルでは120の国と地域に展開するEYパルテノンとしての協働が望めるという、恵まれた体制にあります。
─そうした体制の中で生まれているのが、人材のバックグラウンドの幅広さといえますね。
クリス:
そうですね。人材の多様性は、我々が非常に重要視している強みの一つです。これまでの経験や価値観、考え方が人それぞれ多彩であることが、なぜそれほど重要か。それは私たちの仕事が「白紙状態」から始まるからです。クライアントが抱えている課題は非常に複雑であり、業績不振の原因は決して一つではありません。それに対して我々は、いわば無の状態から調査や分析を行い、想像力を膨らませて解決策を探っていきます。単眼的な見方や偏った考え方、限られた専門性しか持ち合わせていないようでは、まったく太刀打ちできません。だからこそ、多様なタレントを求めて人材の層を厚くし、またあらゆる壁を超えて幅広く連携するのです。
松:
実際、このTRSだけを見ても、会計の専門家や金融機関の出身者、ある特定の業界のエキスパート、事業再生の経験者、海外で事業経験を持つ方など、コンサルティングの未経験者を含めてメンバーのバックグラウンドは多岐にわたっています。専門分野の幅広さと、知悉する業界の幅広さを掛け合わせた多様性がありますね。
クリス:
そのような多様性から生まれた戦略を顧客任せにしないことも、私たちの強みの一つ、他社との差別化要因の一つだと思っています。つまり、戦略を戦略として終わらせず、実行して成果を出すまでクライアントに伴走する、最後まで一緒に走り抜く。それが、私たちEYのマインドセットであり、成功への方程式です。
経営者とともに難題に挑み、変革を引き起こすダイナミズム
─仕事のやりがいについてはいかがですか。皆さんご自身が感じている醍醐味をお聞かせください。
篠原:
日本を代表するような大企業からミドルクラスの企業まで、さまざまな組織が直面する構造改革の難題に立ち向かうこと。それは非常に大きな困難を伴う挑戦ですが、それだけに我々のサポートが奏功し、変革を成し得たときの達成感は大きなものがあります。自分が支援した企業が、より強い企業に生まれ変わる。そのダイナミックな瞬間に立ち合うことができる歓びもあり、またクライアントから評価され、ビジネスパートナーとして認められる歓びもあります。私にとっての最大のやりがいですね。
松:
経営の真髄といいますか、奥深いところにまで関与しなければ、事業の再生、組織の再建はできません。その経験が得られることは、コンサルタントとしてのキャリアを築くうえで貴重な糧となるはずです。特に我々が接するカウンターパートは顧客企業の経営陣である場合が多く、そうした要人でさえ経験したことのない重大事を前に、ともに悩み、ともに打ち手を探り、意思決定の支えとなる。そこから得られるものは計り知れません。私自身、そうしてターンアラウンドの世界でキャリアを積んできました。
クリス:
私にとっての醍醐味は2つあります。まず、難しい局面をともに乗り越えた先に築かれる、クライアントの面々との深く長い信頼関係です。企業の再建・再生は、ともすれば大量の解雇を伴うこともある深刻な問題ですから、顧客が抱えるストレスは半端なものではありません。その苦しみを分かち合うことで生まれる信頼が、友情につながることもある。私にも、今もそうして25年来の旧交を温めている友人がいます。
もう一つは、日本企業の成功をサポートし、この国の未来に貢献できること。日本の企業が今後、本当の意味で成功をつかみ取るには、国内のビジネスに留まっていてはいけません。グローバルに進出して勝利を手にする必要がある。しかしながら、日本企業が世界市場でポートフォリオを管理することがどれだけ困難か、私自身が身に染みて感じていますし、実際、苦戦を余儀なくされている企業が数多くあります。このままでは日本の国力さえも損なわれてしまう。そんな状況を変えるために力を尽くしたいと思っています。
─そのやりがいを分かち合えるメンバーとして、どんな人材を求めますか。
松:
組織再建・事業再生の即戦力、バリュークリエーションの経験者に限らず間口はもっと広く取っています。財務・会計に関する基礎的な素養、経営に関する知識や経験を持ち合わせている方であれば、十分に活躍できる世界です。ただし、必ずしも専門家レベルである必要はありません。それよりも、難しい問題に直面して悩む経営者の力となり、変革を見届けるまで支え続けることに意義を感じられる人を強く求めます。そのためには文化も価値観も仕事の仕方も違う人たちとタッグを組み、そのこと自体を楽しめるような人物が適しているのだと思います。
クリス:
この世界で成長する人物には3つの要素があります。一つは、複雑で難解な問題に対する好奇心を持ち、すすんで解決に向かっていけること。次に、あらゆる面でリーダーシップを発揮し、主体的に解決策を実行できること。推進力と言い換えてもいいでしょう。顧客から言われた施策をこなすのではなく、自分自身が無から解決策を紡ぎ出そうとするマインドです。最後に、描いた戦略の実現可能性を高めるため、裏づけとなる証左を緻密に準備できること。その努力を怠る戦略は画餅に過ぎません。
篠原:
先ほど触れたように、ストラテジックな側面を併せ持つことがTRSの特色の一つです。額面どおりの再生に終わらない、「戦略+再生」の発想を持って新しいビジネスを切り拓いていける人材に期待しています。チャレンジングな仕事だと思いますが、我々が提供する多彩なトレーニングの機会を思う存分に活用し、また実際の案件を通じて経験値を積んでいけば、決して難しいことではありません。私たちが味わっている醍醐味に共鳴していただける方ならば、必ず成功を収められるでしょう。