消費財・小売流通
Consumer
全ての消費者が豊かで素晴らしいと
思える日常を実現するために。
消費者の価値観が多様化する今、消費財・小売流通セクターのコンサルタントには何が求められるのでしょうか。全ての消費者が豊かで素晴らしい日常を持続的に過ごすことが出来るようにする。このパーパスを実現するため、セクター内での変革を強力に推進する消費財・小売流通セクターの平元 達也パートナー、小林 暢子パートナー、そして渋川 清一パートナーにお話しを伺います。
はじめに、消費財・小売流通業界で起きている最新動向についてお話いただけますか?
消費財・小売流通業界は今、かつてないような変革期に直面しています。新型コロナウィルス感染症の影響による新しい生活様式、ミレニアル世代やZ世代に代表される新しい価値観を持つ消費者の台頭、デジタル技術の飛躍的向上、企業の社会的責任に対する意識の高まり、これらが主な背景だと考えています。
平元さんが触れた価値観の転換が、最も如実に表れるのが消費財です。加えて私がトピックとして挙げたいのは、持続可能性つまりサステナビリティの重要性。そして、デジタライゼーションです。サステナビリティについては、おむつのリサイクル製品がメディアで話題になったように、あらゆるステークホルダーにとってわかりやすい取り組みが消費財業界には求められていると思います。また、デジタライゼーションにおいては、D2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)などによってパーソナライズされた販売手法やサービスの提供を実現することが重要だと考えています。
消費者の価値観が変わる一方で、企業の販売手法は従来からほとんど変わっていない。そこに私は違和感を覚えます。もっと消費者のニーズに合った買い物の仕方を追求していくべきだと思います。その意味でも小林さんが触れたように企業はデジタライゼーションを早急に進めるべきだと思います。
我々コンサルティング・ファームには何が求められているのでしょうか?
消費財・小売流通業界の企業が提供する商品やサービスは、人々の生活に直結しています。つまり、消費財・小売流通企業群の成長が、人々の生活やその豊かさに直接的な影響を及ぼします。我々クライアントの成長イコール人々の生活の豊かさの向上という社会的意義を絶えず念頭に置き、活動していきたいと考えています。また、あらゆる企業が社会的責任も問われる時代となり、SDGs(※1)に関する取り組みやESG投資(※2)に対応することをご支援させていただくことも重要なテーマだと思います。
SDGに適った投資をする目線が強くなり、SDGを事業のコアに据えているかどうかが資金調達に影響します。また、消費者の選択眼が肥えて、SDGへの取り組みが直接売れ行きを左右する時代です。
財務的なパフォーマンスの改善だけではなく、サスティナブルなビジネスモデルを確立するためのサポートにも、我々は注力しています。
クライントに未来図を提示し、変革をリードすること。それが我々の役割だと認識しています。たとえば、消費財・小売流通業界でDX(デジタルトランスフォーメーション)が進展しないのは何故なのか。私は、我々コンサルタントのリーダーシップにも責任があると感じています。
価値観の文脈が大きく変わるこの転換期において、舵取りに悩まれている経営者は少なくありません。その点、我々パートナー陣は40代から50代の壮年期であり、物質的な豊さを追い求めた時代も、今世紀に入ってからの精神的な豊かさを重視する時代のどちらも経験しています。両方の価値観を知っているからこそ、経営者の方々に確かな提言ができる。そう私は考えています。
※1:国連サミットで合意された持続可能な開発目標 “Sustainable Development Goals”
※2:環境 “Environment”・社会 “Social”・企業統治 “Governance”に配慮している企業を重視して行う投資
消費財・小売流通セクターにおける“Building a better working world(BBWW)”については、どうお考えですか?
近頃、その言語化に消費財・小売流通セクターとして取り組みました。そして、決定したのが次の一文です。“世界中の多様な価値観を持つ全ての消費者が、豊かで素晴らしい日常を持続的に過ごすことが出来る世界を実現する”。このBBWWを社内外に浸透させていきたいと考えています。
“全ての消費者”というワードについては、私は“色々な側面を持った人間一人ひとり”と捉えています。“働く人”という側面や、“家族の一員”という側面など、あらゆるチャネルから消費財の価値にフォーカスしていきたいと考えています。
私が特に注目したいのは、“世界中の多様な価値観”という部分です。消費者側に立って考えると、その人にベストフィットする製品をリコメンドできる仕組みの構築を支援すること。一方で、リテール側に立てば、日本人のライフスタイルに合ったサービスの確立もBBWWに含まれていると捉えています。数万点あるアイテムの中から、自分好みの商品をすぐに選んで帰宅できるコンビニや、症状を改善できる薬を誰にも気づかれずに購入できるドラックストアなど、多様な価値観に応えるタッチパネルを創ることが、豊かで素晴らしい日常につながると考えています。
将来の消費社会の変化に対応した新しい消費財・小売流通企業のビジネスモデルをクライアントと共にデザインすることも我々の重要な役割です。また、簡易かつスピーディーに調理ができる食品や、美味しさと健康面への配慮を両立させた飲料など、日本企業は素晴らしい製品技術やノウハウを持っている。それらを世界中の人々に届けるための企業サポートにも我々は注力していくべきでしょう。
一方で、消費者を考える上で忘れてはいけないのが、豊かで健やかな毎日を送るキラキラした人々ばかりではないということです。貧困や障がいなどに苦しむ人も世界中には大勢いるわけで、社会的弱者にも目を向けた枠組みを創っていくこともBBWWに含まれていると理解しています。
非常に大事な観点ですね。例外なく全ての人々が豊かな日常を過ごせる世界を実現させる。それこそ消費財・小売流通セクターの使命だと思います。
最後に、どんな能力や資質を持つ人材の参画を期待しますか?
大前提として、やはり我々のBBWWに共感できる方と一緒に働きたいですね。我々が直接サービスを提供するのはクライアントです。そのクライアントの成長支援を通して我々のBBWWを実現したいという動機を持つ方に、ぜひご入社いただきたいと思っています。
私はこの仕事を20年ほど務めてきましたが、コンサルタントに求められることは大きく変わったという実感があります。クライントの知識レベルも高くなり、単に情報を収集してレポートを提出するといった仕事ぶりでは評価されません。その意味では、事業や組織に変革を起こす、人と人をつなげて化学反応を誘発するといった、カタリストになれるような人間力を持つ方に来ていただきたいですね。そして、“多様性”も採用の重要なポイントだと思います。全く毛色の違う業界からでも歓迎しますし、学歴や出身国も多彩な組織であった方がいい。チームとしての発想力が上がりますからね。
同感です。社会でダイバーシティが進む中、色々な知見が集まること自体に大きな価値があります。DXのような変革を起こす際に必要なのは、技術ではなく発想だと私は思います。論理的な思考力や問題の構造理解力に長けているのは当然として、今後はAIが担う仕事の領域も広がっていくでしょう。その人しか発想できないアイデアを出せることが、コンサルタントとしての価値になると考えています。
その点は、私も小林さんや渋川さんと同じです。クラアイントが商品やサービスを提供する消費者の行動は大きく様変わりしています。このような環境下、我々が、将来の消費者行動の変化を想定しクライアントが採るべき将来戦略をクライアントに示唆していくためにも、ドラスティックな消費市場の変化やクライアントの既存のビジネスモデルに捕らわれない新しいビジネス戦略を描けるような柔軟な発想の持ち主に参画していただけることを願っています。