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Smart Society Strategy(SSS)/スマート社会の実現に
向けたスタートアップ企業支援

スタートアップの力で実現する
「Society5.0」のスマートな世界

パートナー荻生 泰之

ディレクター鈴木 顕英

サイバー空間とフィジカル空間が高度に融合し、社会課題の解決と経済発展をともに実現する社会——「Society5.0」を創出するために業界を横断して行動するSmart Society Strategy(SSS)チーム。その多彩な活動には、スマート社会の実現に欠かせないスタートアップ企業への支援も含まれます。今、何が動き、どのような成果を見せているのか。求められる人材像とともに聞きました。

あらゆる境界を乗り越え、新たな産業と社会を希求するチーム

Smart Society Strategy(SSS)チームのミッションについてご紹介ください。

荻生:
政府が定めた日本の未来社会の姿、いわゆる「Society5.0」の実現を使命として、FinTech、ブロックチェーン、情報利活用、地域活性化、サプライチェーンといった分野で、政策提言や戦略策定、コンソーシアム構築・運営などの活動を進めているチームです。

なぜ、政策提言なのか。それはひとえに、日本で新しい産業を創造するためです。コンサルティング会社は通常、あるクライアントのために経営戦略や事業変革を支援しますが、新しい産業を創るとなると1企業の力だけでは足りません。日本全体のことを考え、さまざまな業界を横断して構想を描き、戦略を動かす必要があります。状況によっては、行政を巻き込み、規制の壁を越えなければならない局面が必ずある。そのための政策提言です。

鈴木:
したがって、私たちは特定の企業の利益創出を支援するのみならず、業界や産業レベルでの新たな取り組みを支援することを通じて、社会の課題を解決し、ひいては社会システムそのものに変革を起こしていく。それは、SSSが属する「ストラテジック インパクト」というユニットの使命でもあります。

また、その実現にとって欠かせない主体がスタートアップの事業者であり、われわれはその新進気鋭の勢力を支援する活動にも力を入れています。

Web3の産業ビジネス創出に向け、政策提言を通じて環境整備

スタートアップ支援の中でも特に力を入れている領域が、Web3とのこと。どのような活動でしょうか。

荻生:
Web3というのは、主にブロックチェーン技術によってもたらされる分散型インターネットを指しますが、その技術がにわかに注目を集めたのが2014年のマウントゴックス事件でした。暗号資産交換所のマウントゴックスからブロックチェーン技術を使ったビットコインが大量に流出し、一瞬にして多額の資産が消失した事件。これを機に暗号資産の安全性や管理体制が問題視され、政府・行政も対応を迫られることになります。

私は当時、主要政党の政策アドバイザーを務めていたこともあり、相談を受けて対応策を協議することになりました。そこで浮上してきた方向性の1つが、暗号資産およびブロックチェーン技術の価値と使い道を正しく認識し、普及拡大と社会実装を推進するというものです。そのために、一般社団法人日本価値記録事業者協会という業界団体を立ち上げることになりました。EYはその草案づくりなどの設立支援から携わり、その後、日本価値記録事業者協会は一般社団法人日本ブロックチェーン協会に改組され、今も私自身がアドバイザー兼渉外室長を務めるなどして運営サポートを行っています。

鈴木:
ブロックチェーンは暗号資産に使われる基盤技術ではありますが、それに終始するものではなく、さまざまな産業分野で情報の透明性や権利の所有・移転を証明する技術として活用が期待されています。そうしたサービスを新しい産業として確立し、社会にその恩恵を届けることが日本ブロックチェーン協会の目標です。

それには産業界や社会一般への啓発活動、事業者間の連携を強める活動、そして政策提言による行政への働きかけが欠かせません。協会による、ブロックチェーン推進議員連盟に対する支援もその一環です。議員の方々や中央省庁と民間企業・団体との意見交換を積極的に行い、産業界の意見を広くWeb3に関する政策立案や制度設計に役立てられるよう動いています。

EYSCも協会メンバーの一員として支援に参加しているわけですね。どのような成果が見られますか。

鈴木:
2022年6月に閣議決定を経て発表された政府の「骨太方針(経済財政運営と改革の基本方針)」に、「ブロックチェーン技術を基盤とするNFT(非代替性トークン)の利用等のWeb3.0の推進に向けた環境整備」が盛り込まれました。また、石破総理による昨年10月の所信表明演説でも、ブロックチェーンなどの新技術を地方創生に生かすとの方針が示されました。このようにブロックチェーンの推進が国策として位置付けられたのは、私たち産業界が議員や政府との対話を粘り強く続きてきたことの活動成果だと思っています。

また、Web3を推進するための環境整備の一環として、2023年度から暗号資産の保有などに関する税制改正が行われることにもなりました。これによって起業が進み、スタートアップの振興にもつながるわけですね。ブロックチェーン技術を用いたNFTやDeFi(分散型金融)、あるいはセキュリティートークンのような新しいサービスを生み出す担い手として、スタートアップへの期待値は大きいのです。

スタートアップの成長と行政課題の解決を同時に実現

スタートアップと自治体による協業をサポートする活動も進めておられます。

鈴木:
東京都が進めている事業ですが、都政の現場が抱えるさまざまな課題をスタートアップの力を活用して解決する「UPGRADE with TOKYO」をご支援しています。子育てや教育、防災、医療・福祉、文化・スポーツ、公共インフラなど、都のさまざまな部署の職員が日々直面している課題の数々。それらを取り上げ、解決に名乗りを上げたスタートアップとともに話し合い、理解を深めて提案を募り、優れた解決策を採択するという試みです。

都としては民間の画期的なサービスや技術を取り入れることで都政の課題解決を図り、スタートアップはさらなる成長の機会となり、この様子を広く動画配信することで企業の機運を高める、そういうさまざまな効果を目指しているわけです。

そのような新しい仕組みづくりに貢献できるEYの強みとは?

鈴木:
冒頭で申し上げたように、われわれは社会課題の解決を重要なミッションに位置付けるコンサルティングファームであり、そのことはEYが世界共通のパーパス(存在意義)に掲げる「Building a better working world 〜より良い社会の構築を目指して」によっても裏付けられています。つまり、社会課題や行政課題に対する深い理解とその解決の実績がある。その一方、ブロックチェーンをはじめとする先端技術を起点としたビジネス創造、またそれを担うスタートアップへの支援においても蓄積された知見とノウハウがあります。このように行政とスタートアップ両面に通じていることでお役に立てているものと自負しています。

いかにミスマッチのない協業へと導くかが、この事業の成否に関わる最大のポイントです。そのためには、東京都の各部署から挙げられる課題の真因を見極め、スタートアップに提示するにふさわしいテーマを設定しなければなりません。その課題の精査と整理に知見を発揮することが、われわれの役割の1つです。同時に、それらのテーマに対して適切な提案ができる力を秘めた、都のパートナーたるにふさわしいスタートアップに参画してもらわなくてはなりません。われわれの持つ強力なネットワークをそこに生かします。

私たちがこの事業を支援して2カ年が過ぎ、30件近くの協働プロジェクトが進行しています。例えば、生活文化スポーツ局は2025年11月に東京開催となるデフリンピック(聴覚障がい者のアスリート対象とした国際総合スポーツ競技大会)に向け、聴覚障がいの有無によらず一体となって競技会場が盛り上がる取り組みが募集されました。このテーマに対しては、競技会場の音声をオノマトペとしてリアルタイムで表示する技術を持つスタートアップが採択され、大会本番に向けてプロジェクトが進行しています。

国際金融都市を日本各地にー全方位の知見を生かした支援

東京都では「国際金融都市」という政策目標を掲げていますが、そこにもスタートアップの力を生かす取り組みが見られますね。

荻生:
東京はかつてニューヨーク、ロンドンに続く世界第3の国際金融都市として君臨していましたが、激しさを増す国際競争の中で香港や上海、シンガポールといった都市の台頭に押され、アジア首位の座を維持することが難しくなりました。その復権を期して、金融サービスを活性化するビジネス環境の整備をはじめとしたさまざまな取り組みが進められています。

その1つに、東京市場に参加するプレーヤーの拡大・育成を目的として、世界中から先進的なFinTech企業や資産運用業者を東京に進出させるプロジェクトがあり、われわれSSSもこれに参画しています。既成概念にとらわれない、優れた技術を持つFinTech企業の多くはスタートアップです。国内だけでは不十分なそれらの企業を海外から誘致することより、都の取り組みを加速させるのが狙いです。また、資産運用業者に東京市場の魅力をアピールして投資を促す、もしくは日本から海外への投資を進めることで、新進企業の育成に貢献します。

実はこの取り組みは東京に限ったものではなく、大阪、福岡、札幌でも同様に国際金融都市を目指した事業を展開しています。米国にシカゴやサンフランシスコといった国際金融都市があるように、日本にも東京一極ではない金融の拠点を築き、金融サービスを発展させ、資金の流入により地域を活性化したい。そんな思いを持っています。
これをご支援することも私たちの任務。2020年から活動を始め、これまでにFinTech企業と資産運用業者を合わせて数十社の誘致に成功しました。

それぞれの都市に対してどのような支援を提供しているのですか。

鈴木:
日本に進出する企業を国内で奪い合うことは意味がありません。海外から見れば「日本の金融市場=東京」といった固定観念がある中で、どのようにして各都市の市場としての独自の魅力や強みを訴えるかが勝負です。

例えば、福岡ならばアジア諸国との近接性が1つ挙げられるでしょう。企業にとってはアジア市場への玄関口として東京に勝る利点がありますし、経済圏が相対的に小さい分だけ互いに顔が見えるコミュニティがあり、地元金融機関とも密な関係を築くことができます。

また、大阪には製薬会社などのバイオ関連企業が集積している、デリバティブやデジタル証券の市場があるなどの強みがあります。このような地域ごとに異なる産業や社会の状況、金融サービスの特性を海外に向けて発信し、丹念に進出メリットを伝えていく活動が重要で、われわれの持つ金融・政策・地域経済、そしてスタートアップに関する知見とネットワークをそこに投入しています。

社会課題を解き、経済成長を促すスタートアップエコシステム

スタートアップそのものをエンパワーメントする取り組みも重要です。

荻生:
私たちはEYSCとしてだけでなく、EY新日本有限責任監査法人、EY税理士法人、EY弁護士法人とも連携し、「EY Startup Innovation」の名の下でスタートアップを支援するための包括的なサービスを提供しています。投資・ファンド運営や資金調達アドバイザリー、オープンイノベーション、戦略立案など、スタートアップエコシステムの構築に求められるさまざまな分野の専門人材を集め、必要なサービスをワンストップで提供できる体制を固めました。

もともと監査法人というのは起業と切り離せない関係にあり、設立から成長段階に向けてのサポートに始まり、IPO(新規株式公開)における会計監査やコンプライアンス構築などを通じて深く関わります。私たちはそうした関係性をベースとしつつ、スタートアップ推進議員連盟への協力をはじめとする政策面での支援、スタートアップを含む産官学の連携で地域経済活性化を目指す自治体への支援、さらにエンタープライズ企業の事業戦略をスタートアップの力で加速させる支援など、多面的な取り組みを進めています。

もちろん、そこにはスタートアップ自身の戦略立案を支える活動も含まれます。表彰制度もその 1つ。Web3をはじめ、脳科学、ロボティクス、宇宙など、今後の著しい成長が期待できる分野を対象に、革新性や成長性、社会性などの観点から優れたスタートアップ企業を選出しています。

あくなき好奇心と行動力で社会とビジネスの変革に挑んでほしい

そのような多岐にわたる活動をともに進めていくメンバーとして、どのような人材を求めますか。

鈴木:
キーワードとして「貪欲な好奇心」「知的体力」の2つを挙げたいと思います。SSSの仕事は制度の壁、規制の壁、業種の壁など、さまざまな境界を乗り越えて新しい産業の創造を目指すことに特徴があり、 醍醐味(だいごみ)があります。

ですので、自分の得意とすることに固執せず、まったく知らない領域にも果敢に足を踏み入れ、必要な知識やスキルを独力で身に付けようとする気概がなければ成果を上げることは難しいでしょう。そこで必要なのが貪欲な好奇心です。未知の世界を面白がる、新しい道を自らリードして切り開く。そういう人を求めます。

それはもちろん、言うほど簡単なことではありません。インプットを得るにはそれなりの努力を払わなくてはなりません。しかも高い頻度で、迅速に。それに耐え得る知的な体力を備え、粘り強く続けられる人を求めます。政策提言や戦略立案というアウトプットは、その先にこそあるものです。

荻生:
世の中をより良くしたいと、本気で思う若い人たちが増えています。でも、そう考えるだけでは何も変わりません。世界を変える何かをすべく、一歩を踏み出せるかどうかが大切です。自ら行動すれば、必ず何かが動き、変化が起こります。

上司から言われた仕事をこなすだけでは、自ら前へ一歩を踏み出していないのと同じです。こうすれば世の中が変わりそうだと、自分なりの考えを見つけたら、それに関連する業界に飛び込み、貪欲に知識を得る。すると、ああしよう、こうしたほうが良さそうだと、欲が湧いてくるはずです。その考えを周囲に認めてもらえるよう、さらに検討を重ね、胸を張って主張してください。

そのような強い意志を持ち、セルフスターターとして社会を変革しようと行動できる人に、ぜひ参画してほしいと願っています。

Service Introduction