EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社(EYSC)

 
2023.01.10
社員・プロジェクト紹介

若きコンサルタントの目前に広がる「経済安全保障」という未知の海への挑戦

シニアコンサルタント 菊池

世界を分断するレベルの貿易摩擦や軍民両用技術の開発が進む今、もはや軍事力ばかりが安全保障の道具ではなく、経済による攻防が重要な鍵を握る時代となりました。「経済安全保障」の新しい旗印を掲げてその領域を先導する日本、そしてEYで、産学官の連携を加速させる触媒として挑戦する新進気鋭のコンサルタントが活躍しています。

アカデミアとビジネスの世界が解け合う挑戦の場

──菊池さんは「経済安全保障」という新しい分野のコンサルティングに挑戦しておられます。とくにどのような点が、チャレンジングだと感じていますか?

菊池 安全保障をビジネスの視点から捉えている人や企業はまだ非常に少ないのが実状です。その意味で、経済安全保障のビジネスコンサルティングという領域そのものが、まずチャレンジングだと思っています。

安全保障というと、抑止力や防衛力といった軍事的イメージが先行しがちですが、決してそれだけではありません。サイバー攻撃やSNSによる情報戦もありますし、貿易規制などの経済政策も重要な安全保障のツールとなっています。くしくもウクライナ情勢で顕在化したように、ビジネスで密接に関係していた国や地域がある日突然、紛争に巻き込まれる危険性をはらむこともわかりました。そうした中で、企業としても安全保障を国任せにせず、自ら活動基盤を守り、利益を最大化するための戦略を練る、行動を起こすということが急速に重要性を増しています。まさに、世界中の企業が直面するチャレンジだと思います。

──菊池さん個人としてはいかがですか。なぜ、経済安全保障をキャリアのテーマに選んだのでしょう。

菊池 大学を出てから7年間、米国系金融機関で主にクレジットリスク管理などに関する実務経験を積みました。その後、元々興味のあった安全保障の分野にキャリアチェンジするため、日本と米国の大学院で国際政治、国際安全保障政策といった分野を学びました。軍事的抑止力についても研究しましたが、フェイク情報による選挙妨害といったメディア・コミュニケーションに関する安全保障政策にもテーマが及び、次第に自分の中で安全保障の捉え方が広がったと思います。

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チャレンジという意味では、ビジネスのバックグラウンドを持ちながら大学院に進む日本人は欧米に比べて少数派で、まして安全保障の分野に行く例はほとんどなく、在籍していた米国の大学院で民間出身の日本人は当時私一人だけでした。前人未到と言いますか、ビジネスと安全保障を結びつけることができたなら、それはある種のブルーオーシャンの開拓という思いで、ぜひ挑戦したいと考えるようになりました。

ただ、経済安全保障という言葉は欧米ではあまり聞きません。安全保障の要素として経済が重要であるとの認識は当然ありますが、その概念の定義づけや言語化で先行しているのは日本ではないかと思います。それを牽引しているのが日本のEYだと知ったのは、帰国後に就職活動をしているときでした。

安全保障の側面から企業の実践的BCPを支援

──コンサルタントというキャリアの選択肢はどのようにして見つけたのですか。

菊池 帰国してそのまま研究職に進むか、ビジネスの世界に戻るのか、正直なところ迷いもありました。安全保障をベースに仕事がしたい気持ちは強くありましたし、研究もビジネスも今まで積み重ねてきたことを織り交ぜて何かできればと思ったのですが、果たしてそんな仕事があるものなのか、具体的な当てはなかったからです。

そんなとき、EYストラテジー・アンド・コンサルティングのコンサルティング部門に経済安全保障の専門チームがあることを知ってピンときました。「なるほど、コンサルタントの立場なら学術とビジネスの融合も可能かもしれないし、新しいキャリアパスが開けそうだ」と。コンサルティングファームと安全保障が結びつかず、最初は驚きました。でも考えてみたら、米国には安全保障について官民に向けて政策提言や情報発信を行うシンクタンクがありますし、コンサルタントがそれに類する役割を担ったとしても不思議はありません。

これから増えてくるのかもしれませんが、そのときはほかにそうしたコンサルティング会社は見当たらず、この分野におけるEYのアドバンテージを感じました。ここには安全保障をバックグラウンドに持つ専門家がたくさんいますし、あのタイミングで出会えたことはとてもラッキーだったと思います。

──日本企業にも経済安全保障に対する認識が広がりつつあるとのことですが、具体的にはどんな支援を提供しているのでしょう。

菊池 わかりやすいものを1つ挙げると、有事シナリオのご紹介があります。エスカレーションシナリオと呼んでいるのですが、例えばあるエリアで、日本への影響が避けられない軍事的衝突があった場合、日本も含めてそれに絡む国々や地域がどう対応し、何をするのか、その行為は国際法上可能なのか、どう収束するかといったストーリーを組み立ててお見せします。もちろん、それが起きるという予測ではなく、いろいろな展開が考えられるという可能性を示すことに意味があります。

そしてもし、本当に有事が発生した場合はどうなるのかのシミュレーションをお見せすることも想定しています。これは先ほども触れた米国のシンクタンクが得意とするところで、実は私も2022年9月に現地でのトレーニングセッションに参加してきたのですが、そうした機関とも連携しながら知見を提供しています。

さらに、企業としてそうした有事に備えてどうするかを一緒に考えます。BCP(事業継続計画)ですね。生産体制をどうするか、サプライチェーンはどうか、現地駐在員の安全確保は、といった具合に。EYとして今、これまでの「経済安全保障を起点とした企業経営リスクマネジメント支援」をベースとして、「国際情勢の未来リスクシミュレーションに基づく実践的BCP立案支援」を加えて強化しているところです。

すべての人が守られる社会平和の実現に向けて

──菊池さんは「安全保障を考えることは、平和を考えることです」とおっしゃっていますね。思いをお聞かせください。

菊池 私がまだ小学生のころでした。9.11の米国同時多発テロ事件が起こり、そこからアフガニスタン情勢へとつながっていく様を見て、世界ではまだ戦争は終わっていないんだとあらためて認識させられました。学校で習う歴史は第二次世界大戦で終わり。子どもたちはみな戦争は過去の出来事だと感覚的に思い込みますが、現実はそうではありません。そんなギャップというか違和感は、今の日本人の多くが持つ、平和と安全保障をなんとなく分けて捉えている風潮にどこかつながっているように思えます。

安全保障を訴える人々はどちらかというと軍事寄りで、何か勇ましく保守的な感覚から現実論を展開する。一方で、平和を叫ぶ人たちは平和であることだけを望み、リアルな安全保障の必要性にはあまり目を向けたがらない。二極化されていて、その中間がありません。実際には両方の視点を持つ人も多くいるはずですが、少なくとも全体としては分断しているように見えるのではないでしょうか。

話をする菊池

そうではなく、安全保障はみんなのものだと私は考えています。人の命を守り、財産を守り、人権を守るという平和に欠かせない要素は、安全保障にとっても大事なことです。ウクライナ情勢で目の当たりにしたように、武力衝突があれば真っ先に影響を受けるのは子どもや女性、老人といった弱者です。人権なんて一瞬にして吹き飛んでしまう。そうさせないために、つまりは攻め込ませず、自分の身を自分で守るために、安全保障があるのです。必ずしも勇ましい武闘の具ではなく、私たちが大切にしている生活や価値観を守るための手段として。そのことをみんなで考え、みんなのものにしたいと私は思っています。

私はフェミニストであることを自認し、できるだけ多くの場で発言するようにしています。時にはそれを揶揄されることもあって、まさに分断を感じるのですが、それでもあえて選択的夫婦別姓や同性婚や女性の権利といったことについて意見を表明するのは、みんなが生きやすい世界をつくりたいと願うからです。性別も人種も階級も関係なく、誰の権利も等しく認められる平和な社会であるために。私の中で、それは安全保障と同義です。

──安全保障と平和に関心を寄せるコンサルタント志望の方々にメッセージをお願いします。

菊池 これまであたり前だと思っていた自由で開かれた経済に歪みが生じ、利益中心だった資本主義の姿が変容しつつあります。その中で、日本と世界にとっての最適解を見つけていかなければなりません。また、そのために必要な新しいルールづくりも求められています。経営的な視点や政策的な視点も含め、それらすべてが経済安全保障に関わってきます。ほとんどの人がまだ踏み込んだことのない、新しい領域へのチャレンジ。EYはそれができる数少ない舞台の一つです。ぜひ考えてみてください。

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